キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「するならしなさいよ」
菜穂さんは不敵に微笑むと、つかつかとバス停の方へ歩いていってしまった。
なんだあれ……嵐のような女の人……。
「はっちゃん、大丈夫だった?ごめんね、遅くなって」
「ううん、助かったよ」
「遅れた代わりに、今の現場、ばっちり動画撮ったからね。店長に見せてやるっ」
いつも穏和な長井くんも、ふんがふんがと鼻息を荒げていた。
「話、聞こえてた?」
「ううん。店の中から撮っただけだからさ」
スマホをチェックしながら、長井くんは言う。
「あの人、店にいるときもあんな感じ。自分の思い込みですべてを決めて動いちゃって、店長が『それは違う』って指摘しても認めなくて、結局ミスする、みたいなこともたびたびあったよ」
セクハラ大魔神の杉田さんまで、ため息をついて菜穂さんが歩いていった方向を見つめる。
みんな、あの人に手を焼いてたんだ。
「はっちゃん、何言われたの?」
「ええと……寮に通してもらえなかった愚痴です」
曖昧にごまかすと、杉田さんはまたため息を落とす。
「仕方ないよな。一応内線で店長に確認したら、『断われ』ってバッサリ言われちゃったしさ」
「そうなんですか」
「そう。店長は顔もいいし、あの若さで地区長に出世、将来有望だからどうしてもお嫁さんになりたいみたいだよ」