キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「昼間、大久保に何を言われた?長井がお前があいつに絡まれていたと教えてくれた」
「ええ……っと……」
何をどこから言えばいいのか。少し迷う。
「要するに、菜穂さんは店長がまだ好きなんだそうです」
「それはわかってる。それだけであんな般若のような顔でお前に詰め寄るか?」
多分、長井くんが撮った動画のことを言っているんだろう。
「……私たちがつきあっていることに気づいたみたいです。一応、ただの部下だって言っておいたんですけど」
「それで?」
「それで……」
線路の上にかかる歩道橋の下で、ぴたりと足が止まってしまった。
この後のことを話すには、どうしても異動の話をしなきゃならない。
でも、このままじゃらちが開かない……。
「私は、店長に遊ばれているんだそうです」
真っ直ぐ目を見ることはできなかったけど、その表情が硬くなったのがわかった。
「店長が地区長試験に受かったら、愛知に異動になる。だから、私との関係もそれまでなんだって……」
言葉に出したらどんどん悲しくなってしまって、声が震えた。
「……そうか」
小さく息を吐く店長。
「たしかに、地区長になったらいつでも本社に通えるように異動してくれとは言われてる。俺は独身だし、今も寮だし、異動命令が出しやすいから」
淡々と説明する彼はちっとも焦っていなくて、狼狽えている自分に腹が立った。
どうして私だけ、こんなに寂しいの?