キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
8・渡る世間はマジ鬼だらけ
今のお店に異動してから、もう2か月が経とうとしていた。
いつものように朝礼を終え、メガネふきを洗濯機に放り込んで戻ると、珍しい人物がお店にいるのに気付いた。
「おっ、椎名さん。おはよう」
少し薄くなってきた頭に、肉付きのいい顔。
丸っこいメガネをしている彼は、こっちの地区の地区長だ。
例の、フェラガモのコーナーに鴨の置物をしたひと。
「おはようございます」
「最近頑張ってくれてるんだってね。矢崎くんの報告書に載ってたよ」
「へっ」
「先月の書類の『店の改善点』の欄に『椎名初芽の再教育』って書いてあったときは笑ったけどね」
俊め……そんなことをわざわざ書類に書いていたとは。
それだけ、最初の私はお店の役に立っていなかったってことなのね。
まあ、今は改善されたと報告してくれたならいいか。
「新しいディスプレイもいい感じじゃない。この調子で頑張ってね。ええと、では……」
地区長は、たまに各店の見回りにくる。
心配していたディスプレイは、あっさりお気に召したみたい。
それよりも重要な仕事があるようで、地区長は顔から笑顔を消し、杉田さんの方へ向かっていく。
肩を叩かれた杉田さんと地区長は、一緒に寮へ上がっていった。
何か重要な話があるのかな。