キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
9・鬼はやっぱり鬼?
お店の閉店は9時だけど、私が応援を頼まれているのは8時まで。
店長さんに挨拶すると、笑顔でお礼を言われた。
「はぁ、疲れたなあ」
従業員出入り口で警備員さんに荷物チェックをしてもらい、入店証を返していると……。
「なんか、かっこいいお兄さんが外で誰か待ってるみたいよ」
「あら。テナントの人?」
「さあ……私は見たことない人だったけど」
一階の食品売り場のレジのおばさんたちがそう話しながら、通路を通っていった。
かっこいいお兄さん……まさか。
思わず早足になって、出口の重い扉を開ける。
するとそこにいたのは……。
「やあ、はっちゃん。お疲れ様」
優しい陽だまりのような顔で笑う、長井くんだった。
驚くと同時、彼が俊じゃなかったことに、少し失望する。
もしかしたら、会いに来てくれるかもと思うなんて、都合よすぎるよね。
「長井くん。どうしたの?」
むりやり笑顔を作って近寄ると、長井くんはもたれていた自転車置き場の柱から背中を浮かせた。
今日は出勤だったはずなのに、長井くんはなぜか私服だ。
チェック柄のシャツが、彼の中世的な顔を引き立てる。
「なんか、はっちゃんがへこんで泣いてるような気がしてさ。気になってきちゃった」
「どうして……もしかして、私が他のお店で変な噂を立てられてるの、知ってたの?」
単刀直入に聞くと、長井くんの顔から笑顔が消えた。