キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「それにしても誰が、そんな噂を立てたんだろう」
「平尾さんに決まってるじゃん!」
あのおしゃべりが、悪意を持って他のパートさんに広めていったとしか思えない。
「わかんないよ。意外と杉田さんも陰険だからね。セクハラするくらいだし。矢崎店長もセットで逆恨みされる理由がある」
「あう……」
そう言われればたしかに。二人とも、信用できない。
冷めたらまずくなるから、と長井くんに料理をすすめられる。
トマトとモッツァレラチーズのサラダをちびちびつまんでいると、長井くんが小さな声で言った。
「あと、もう一人いるよ。容疑者」
「え?」
「菜穂さんだよ。あの人、元社員だし、矢崎店長に気があるから」
胸がぎしりと嫌な音を立てたような気がした。
まさか、そんなことをしてまで、私を俊から遠ざけようとしているっていうの?
「そんなに暇じゃないでしょ」
「まあ、無実だといいよね。菜穂さんだったら怖すぎるよ」
長井くんがビールの入ったジョッキを傾ける。
「とにかく、下手に動くより、風化するのを待っていた方が良さそうだよね。今月末で切られるパートさんたちがいなくなれば、みんな忘れるよ」
「そうだよね、しょせんは噂だもんね」
「言われるはっちゃんは辛いし悲しいと思うけど……ここで俺や店長がやたらと庇ったりすると、また女性従業員の反感買いそうだしね」