キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「はっちゃん、飲みすぎ。そろそろ帰ろう」
満腹でお酒も入り、うとうととしてきた私に、長井くんが声をかけた。
「やだよぉ。もっと飲もうよお」
「明日出勤したら、明後日は定休日でしょ。とにかく明日まで頑張ろう」
「うう……はぁ~い……」
のろのろと動く私の手を、長井くんがそっとにぎる。
私はそれを嫌だとも思わなかった。
ただ、父親に手をひかれる子供のような気分で、長井くんに従ってお店を出る。
「もう遅いし危ないから、タクシーで帰りなよ」
「そだね」
ふらふらと長井くんの背中だけを見て歩いていくと、途中でふと気づいた。
ここ……どこ?
周りを見れば、怪しげな電飾を付けられた看板が並んでピカピカ光っている。
それなのに、通りには人がほとんどいない。
いると思ったらそれは必ず二人連れで、いそいそとまるで逃げ隠れるように建物の中に入っていく。
「駅のタクシー乗り場じゃないの?」
一瞬で酔いがさめたような気がした。
自分たちを取り囲むのは、間違いなくブティホの群れ。
途端に危険を感じて長井くんの手をふりほどくと、彼は困った顔でこちらを見下ろした。
「やだなあ、変な勘違いしないでよ。あっちはいつも人がたくさん待ってるんだ。こっちの乗り場の方が空いてて、しかもここが近道なんだ」
「ほんと?」