キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
首をかしげると、長井くんは悲しげな目でこちらを見つめる。
「俺が酔った女の子を無理やり連れ込むとでも?」
「ううん……そっか。ごめん」
長井くんがそんなことするはずないよね。
私は警戒を解き、再び長井くんの後ろをついていく。
すると、突然彼が立ち止まった。
「どうしたの?」
「はっちゃん、あれ……」
長井くんが近くにあった看板の影に隠れ、私を手招きする。
彼が指さす向こうには、一組のカップルがいた。
暗闇の中、目をこらすと、それは……。
「矢崎店長……と、菜穂さん……?」
長井くんがかすれた声で呟いた。
たしかに、あのすらりとした立ち姿は俊だ。そして、その横にとても似合う、スレンダーな女の人。
綺麗で怖い、菜穂さん。
その姿を認めると同時、心臓が握りつぶされるような痛みを感じた。
どうして、二人でこんなところに?
俊に寄り添う菜穂さんの毛先が風に揺れる。
二人はあるブティホの中に、入っていった。
「マジかよ……なんで?」
長井くんも驚き、ぱしぱしと瞬きばかりしている。
やがて彼は髪をくしゃくしゃとかくと、こっちに向き直った。
「はっちゃん……帰ろうか」
なぜか、その顔がすりガラスの向こうにあるみたいに、ぼやけて見えた。