キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「彼氏なのに、なんではっちゃんを泣かすんですか」

「何のことだよ」

「地区中、変な噂が広まっています。店長、ちゃんとはっちゃんをフォローしてあげましたか?」


もしや、昨日の電話でこいつも聞いたのか。例の、バカバカしい噂のことを。


「それでへこんでるのに、浮気までしてはっちゃんをさらに傷つけて……あんた最低だ!あんたがそういう態度なら、俺がはっちゃんをもらいます!」

「は?」


浮気?なんのことだ?


「昨日、俺たち見たんです。店長と菜穂さんが、そろってホテルに入ったところ」


やっと、頭の中で一本の線が繋がった。

つまり、こいつは昼間に例の噂を聞き、初芽を心配して応援先に会いに行った。

昨日入ったホテルは、たしかその店舗からそう離れていなかったはず。

そこで、大久保といるところを長井と初芽に見られたっていうことか。


「……つうか、なんでお前らもあんなところにいたんだよ?」

「俺たちはご飯を食べて、あそこを抜けたところでタクシーを拾おうと思ったんです」


なるほど。二人の間にはなにもないってことか。

一瞬ほっとするけど、そんな場合じゃない。


「誤解だ。俺と大久保の間には何もない」

「え?じゃあ、なんでホテルなんかに……」

「お前に説明している暇はない。後の仕事は頼んだ」


俺は長井に書類を渡すと、裏口へ向かう。

……っと。視界がぼやけると思ったら、メガネがない。

さっき吹っ飛ばされたメガネは、床に転がったまま。

俺は一度寮へ戻り、休日用のメガネを持って裏口を開けた。


「ちょ、店長どこへ?」


長井が顔を出す。


「決まってるだろ。お前に初芽はやらねえよ」


ぽかんとする長井を置き去りにし、俺は車に乗り込んだ。


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