キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「……それは、お互い様だろ」
ぼそ、と低い声がしたので、おそるおそる顔を上げる。
「お前だって、仕事が終わればすぐ帰るし、電話やメールなんてほとんどしてこないだろ」
「それは……」
「男の方からするものだって?」
はあ、とため息をつかれた。
そう言われればそうだ。
私は完全に受け身で、待っているだけだった。
どこかで、告白してきたのは俊なんだから、俊から色々してもらうのが、当たり前だと思ってたんだ。
「悪いけど、俺はそういうの苦手なんだよ。顔が見えない相手に電話とかメールとか、よっぽど用事がないと、何を話題にしていいのかわからない」
「ああ……そうですか」
学生の時の彼氏とは、たわいもない話を朝まで続けられたものだけどなあ……。
そういう人もいるのね。それはしょうがないけど、やっぱり、甘さが足りないよ。
「それに、会いたくないわけじゃない」
座ったまま少し距離をつめられて、どきりとする。
コーヒーの香りが漂う部屋で、一瞬時が止まったような気がした。
「こうやって二人でいたら、いつまでたっても帰りたくなくなるだろ」
「は、い……」
「やっぱり社内の人間だから軽率なことをしてはいけないと思って、我慢してきたんだ」
すっと、俊がそのメガネをはずした。
レンズに反射する光がなくなって、明るい色の瞳が良く見える。
綺麗な茶色に見とれていると、私のメガネも優雅に取り去られた。