キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
11・身内の鬼
翌日。
私はなぜか、実家の近くにいた。
実家と言ってもアパートからあまり離れていない、車で1時間くらいの場所だ。
「あのう……なぜいきなりこんなことになったんでしょうか」
狭いミニクーパーの助手席には私、隣にはもちろん俊。
昨日仕事帰りに来た彼はスーツしか持っておらず、今もそれを着ている。
「なぜって、言っただろ。挨拶しに行くんだよ」
「や、やっぱり、日を改めませんか」
「いや、辞令が出たら準備で忙しくて来られなくなるだろうから」
そう言って俊は、落ち着いた様子でハンドルを握りなおした。
──事の発端は、今朝。
ベッドの中で幸せな夢を見ていたら、俊に起こされた。
彼はキッチンで勝手にトーストと目玉焼きとサラダという朝ごはんを作ってくれていて、『冷めるから早く起きろ』とキスをされたのだ。
ああ、幸せ……じゃない!なんで初めての夜を越えたその朝に、彼氏に朝食を用意させちゃったんだ、私は!
それは私の役目だったはずなのに~!
大失敗だ。ワイシャツの上に私のエプロンをした(安心してください。ちゃんとスーツのズボンもはいています)彼は、私の寝坊を責める気はなさそうだけど。
そうして朝食をいただいているときに、俊が口を開く。
その頬はいつの間に冷やしたのか、もう腫れも赤みも引いていた。
「今日は休みだから、出かけようか」
そうかあ、お休みだから一日一緒にいられるはずだよね!
って、浮かれてる場合じゃなかった。