キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
おかん……今、一張羅に着替えて化粧しているな……?
明らかに今必要のなさそうな、くるくるドライヤーがブーンとなる音が聞こえて、穴があったら入りたいくらいの気持ちに陥った。
家の中がキレイなことがせめてもの救い……。
居間に案内しようと振り向くと、俊が必死で笑いをこらえていた。
スーツの肩がぷるぷる震えている。
「もうっ!だから嫌だって言ったんです!」
「や、最高だよ、お母さん」
とにかく今に座ってもらい、言われた通りにお茶を準備しにいくと、バタバタとお母さんが戻ってくる足音がした。
そして、その後をついてくる足音がもうひとつ……。
「おっかえり~、初芽♪」
出た。私の敵。
すっぴんでも綺麗な顔をした看護師の姉、初音。
横幅が大きいつり目、ハイライトなしでも高い鼻。高いコミュニケーション能力。今日も超絶憎たらしい。
私は小さいころから綺麗で要領の良かったこの姉と比べられ、『のろい』『ダメな子』と散々罵られてきたんだ。
罵った本人(母)は、そんなこと全く覚えていないらしい。それがまたムカつく。
「……なんで出てきたの」
「だって、初芽の彼氏見たいんだもん」
やっぱり、私の帰りを喜んでいるんじゃなく、俊がどんな人か見たいだけなのね。
まだ独身で夜勤もある姉は、こうしてたまに昼間家にいる。
今日は本当に運の悪い日だ。