キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「さあ、あんたたち!お客様を待たせちゃだめよっ」
私たちを押しのけ、お母さんがさっさとお茶を淹れ、お盆を持って歩き出す。
姉は電車ごっこのように、両肩に手を乗せて私を押した。
居間の襖を開けると、俊がにこりと笑う。
私の肩から身を乗り出した姉が、息を飲む音が聞こえた。
「初めまして、矢崎です」
「いらっしゃいませ。姉の初音です」
と挨拶をかわし、姉は俊の隣に座りそうな勢いに。
さすがにそれは、お母さんが彼女のすそをつかんで阻止してくれた。
私はその隙に俊の隣を死守する。
姉は自分がキレイだということをじゅうぶん自覚している。しかも、獲物と見ればそれが妹の彼氏だろうが、人の旦那だろうが、見境なく捕えに行く肉食獣だ。
「まさか、初音がこんなに素敵な人を連れてくるなんてねえ」
「矢崎さん、ご職業は?」
母と姉が口々に好きなことを言う。
「職業は、初芽さんの勤めている店舗の店長をさせていただいております」
姉の顔から、興味が少し消えた。
その代わりに『なんだ、雇われ店長か』という感じがありありと見え、また恥ずかしくなる。
失礼すぎる!姉、やっぱり嫌い!
「もしかして、結婚でもするのー?」
姉が聞くと、母がびっくりしたような顔をした。
そりゃあ、スーツで実家に押しかけたら、そういう挨拶なのかと思うよね。