キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「いえ……それは、まだ。ただ、もう少ししたら海外へ異動することが決まっているんです。なかなかご挨拶に伺えなくなると思うので、今のうちにと思って」
「へえ、海外」
姉の顔に興味が戻ってきた。
『それ、栄転じゃん』と頬に書いてある。ような気がする。
「え……でもそれじゃ、何年も離れ離れになってしまうんですか?もうこの子も25で……」
「ええ、わかっています。けれど、私も今新店の立ち上げを控えておりまして、今すぐ結婚とはなかなか考えられなくて」
しかも、つきあって2か月も経ってないくらいだしね。
とはわかっているものの、少し寂しく感じる自分がいる。
でも、これが俊の素直な気持ちなんだよね。
期待外れと言うようなお母さんにフォローを入れようとしたら、俊が言葉を続けた。
「だけど、私には初芽さんが必要なんです。落ち着き次第、将来のことも話し合っていきたいと思っています」
とくんと、胸が鳴った。
そんなこと、二人のときは一言も言ってくれなかったくせに。
「初芽とは真剣におつきあいしてくださるということですね?」
「もちろんです。ただ、私がいない間、寂しい思いをさせると思います。そのときはどうかお母さん、初芽さんを支えてやってください。お願いします」
お客様以外には決して頭を下げるなんてことしなさそうな俊が、お母さんに向かって深くお辞儀をした。
プライドの高い俊が、私のために……。