キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「まあ、お顔を上げてください。大丈夫ですよ。私たちがいますから」
お母さんがよそ行きの声で、俊の顔を上げさせる。
何が大丈夫よ。俊の前でだけ、いい母親ぶっちゃって。普段は放置なくせに。
「でもさあ、もし結婚するってなったら、初芽大変だよー。海外に行かなきゃならないかもだし、帰ってきても全国転勤があるんでしょ?しかも店長さんじゃ、土日祝、全部出勤じゃん。子供ができて、実家が遠くて旦那もいないじゃ、地獄じゃん」
姉がずらずらと、超現実的なことを……。
俊のセリフに感動していたのに、完全に水をさされちゃった。
「そうですね。そこを踏まえて、初芽さんには本当に私で良いのか、よく考えてもらいたいと思います」
あくまでも、真剣だけど焦るつもりはないことを強調する俊。
「そういえば、矢崎さんの御実家はどちら?」
「福井です」
福井!初耳だった。
っていうか私、なんで今まで知らなかったんだろう。
「将来的には御実家に戻られるの?」
「ええ……両親が健在の間は、帰るつもりはないんですが」
俊の言うことを、お母さんはふむふむと真剣に聞いていた。
そんな二人を面白くなさそうに見ているのは姉だ。
「初芽ぇ、やめときなよ。単身赴任なんかしたら、こんなイケメン旦那、あっという間に浮気するよ」
「ちょっと、初音!」