キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
本人を前にして、何を言いだすのか。
さすがにお母さんが止めるけど、姉は悪びれもせずに話し続ける。
「だって、こんなイケメン、周りの女が放っておかないよ。矢崎さんがいくら良い人でも、うっかりってこともあるからね」
「おねえ、ちょっと!」
いくら身内でも、遠慮がなさすぎる。
ムカッとしてテーブルをたたくと、姉はしれっとした顔で言った。
「だってあんた、高校の時もイケメンと付き合って、浮気されてフラれて、すごく傷ついてたじゃない。それから、イケメンと付き合うのなんか絶対嫌だって言ってたくせに」
「い、今言うこと?それ。しかも、自分に都合の悪いことは全部隠して!」
姉の言うことは真実だ。
学校の人気者だったイケメンに奇跡的に告白された私は、完全に舞い上がって調子に乗っていた。
自分もイケているのではないかと、勘違いしていたかも。
けれど彼は、あっさり浮気した。
しかもその相手は、椎名初音……私の姉だったのだ。もちろん、誘ったのは姉の方。
『だってカッコイイんだもん。初芽より、私の方が彼に合ってるし』そんな信じられないセリフを吐き、妹の彼氏を奪う姉なんて、コイツ以外に聞いたことない。
当時の私のショックは計り知れない。彼氏と身内、同時に裏切られたのだから。
だから私は、つきあったり結婚するなら、人並みの外見の優しい人がいいと思ってた。
姉や他の女の子に誘われたりしない、本当に普通の人が……でも。