キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「しょうがないじゃん。気がついたら、好きになってたんだもん」
最初はすごく厳しくて、自分の顔がいいことを自覚していて、嫌味なやつだって思ってた。
だけど、本当は面倒見が良くて、部下の頑張りをちゃんと見ていて評価してくれる人だった。
「うわ、きもっ」
思い切りひく姉を見て、自分が恥ずかしいことを口にしたことに気づく。
赤面してうつむく私を庇ったのは、俊ではなく、意外な人物だった。
「いい加減にしなさい、初音!自分がまだ独身で、彼氏と長続きしないからって、初芽に意地悪しないの!」
母はそう言い、ぶっとい指のついた手で、姉の肩を叩いた。
うわ……なんか今、産まれて初めて、兄弟喧嘩で庇われたような気がする。
お母さん、本当は姉も私も平等に思ってくれてたの?
「矢崎さん、初芽はぼんやりしてて、頭もそんなに良くないし、適当なところが多い子ですが、どうぞよろしくお願いします」
……前言撤回。発言に悪意を感じる。けど、本当のことだから言い返せない。
唇を噛んでムカつきをこらえていると、軽く頭を下げた母に、俊が優しく言った。
「初芽さんは、店での仕事も本当に責任感を持って、よくやってくれています。信頼できる部下だと、思っています」
「俊……」
「たしかに、多少大らかなところはありますが……彼女のそんなところが、俺を安心させてくれているんです」