キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「ねえねえ、何言われたの?」
ぽっちゃりした興味津々顔にうんざりする。
彼女は昨日も店長の目を盗んでは、度々話しかけてきた。
そのたびに、今までの私の経歴や男性関係のことを根掘り葉掘り調査する捜査官のようだと思った。
「径が足りないって」
無愛想だと思われないよう、困った顔を作り、肩をすくめてみせる。
「それだけ?」
「です」
説明するのも面倒くさいのでそう答えると、平尾さんはつまらなさそうな顔をした。
平尾さんは、私と同じ部類の人間だ。
がんばって働く気なんて、まるでない。
『自分はパートですから』と、面倒臭いことは全て社員に丸投げ。
やることと言えば、銀行への入金とか、お店の買い物とか、保証書に店印押すとか、それくらい。
35歳と聞き、「結婚してお子さんでもいるのか、そりゃあ大変だよね。仕事なんかしてらんないよね」と思えば、長井君から「まだ独身だから、発言には気をつけて」とそっと耳打ちされた。
おしゃべりは大好きだけど、無駄にプライドが高くて、結婚関係の話になると、途端に不機嫌になるとか。
どうやら、お店の中で、私と同じ、扱いに苦労する人物らしい。
「掃除でもしようかな」
深入りしたらめんどくさそうなので、表面だけ仲よくすることに決めていた私は、すっとその場を離れた。
メガネ拭きを持って、ホコリがついてしまったフレームを拭いていると、接客を終えた杉田さんがそっと寄ってきた。