キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「どうも、お世話になりました」
「いえ……次のお仕事は見つかったんですか?」
長井くんが聞く。
「まあね。続くかはわからないけど」
次の仕事決まってるんだ。そりゃあ、気分に余裕も出るよね。良かった。
「いいなあ……独身は気楽で……うちなんか嫁も子供も鬱になりそうですよ」
杉田さんが相変わらずどんよりと言い返す。
「いいじゃないですか、ついてきてくれるだけ!立派なお嫁さんですよ。実家に帰るんでしょ?親孝行もできるじゃない」
「まあ……そうですね。感謝してます」
「そうよ、感謝の気持ちが大事なのよ」
いったいどの口が言うのか。
結婚もしてないのに偉そうに説教した平尾さんは、自分が言ったことに満足げに、うなずいていた。
「じゃあ、さようなら」
言いたいことだけ言うと、平尾さんは堂々とお客様用出入口から出ていった。
はは……最後まで目も合わせなかったわ、あの人。
さて仕事に戻ろうとすると、「椎名、ちょっと来い」と、俊に手招きされた。
近くに寄ると、その手から小さなピンクのジップ付ビニール袋が渡される。
「なにこれ?」
袋をまじまじと見ると、緑の宇宙人のキャラクターのふせんが貼ってあるのに気づく。
『はっちゃんへ』とそこには書かれていた。