キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「一緒に入ってた」
俊は、さっき平尾さんが置いていったお菓子の紙袋を指さす。
首をかしげたまま、ぷちっと音を立てて袋を開けると、中にはクッキーの小さな袋と、その上にふせんとおそろいのメモが乗っていた。
取りだしてみると、『はっちゃんへ 色々意地悪言ってごめんね 元気でね』と、丸っこい癖字で書かれていた。
それを見た途端、何かがこみ上げてくる。
手で口を押えた私を見て、俊が金庫を開けて言った。
「……椎名、昨日の売上入金してこい」
「あ……はい!」
私は通勤用バッグに売上金の入った袋を押し込むと、急いで店を出た。
平尾さんの車は、もう駐車場から出て行こうとしている。
「待って!」
走ってその後を追いかける。
車に追いつけるはずないのだけど、私は平尾さんの車が曲がった方向に向かって走った。
すると、すぐ近くのコンビニの駐車場に、平尾さんの車が入っていく。
助かった。
ヒールを鳴らして走ると、平尾さんが車から降りる。
「なにやってるの。バックミラーで見えたけど」
ああ、追いかけてるの見えたんだ。
たった50メートルほど走っただけなのに、完全に息が上がってしまった。
平尾さんの前で立ち止まった途端、汗がどっと吹き出す。