キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「はっちゃん、店長に何か言われてたみたいだけど、大丈夫だった?」
「ああ……昨日のお客様のレンズ、径が足りないそうで」
「径指定して注文しなおした?」
「あ、まだです」
「じゃあ、計算の仕方教えてあげるから。こっちにおいで」
そう呼ばれて、加工台のところで杉田さんは丁寧に計算の仕方を教えてくれた。
途中で平尾さんがぴょこりと顔を出したけど、仕事の話だとわかると、またつまらなさそうな顔をして、出来上がったメガネのお渡し準備などをする机の前に戻っていった。
「……よし。メーカーさん、なんとか作りなおして納期も間に合わせてくれるって」
「ありがとうございました」
教えてもらったことをメモしながら、お礼を言う。
「他に何か聞きたいことある?僕で良ければ教えるよ」
杉田さんはにこりと笑って言う。
「いえ……また困ったらお願いします」
好意はありがたいけど、いつも何も考えないで与えられた仕事をこなしているだけだから、いきなり「質問は?」と言われてもすっと出てこない。
そんなやり取りをしていると、お客様が入ってきた。
一番近くにいた平尾さんが、仕方なさそうに接客に出ていく。
けれど、お客様から古いメガネを預かると、すぐに加工台のところに飛んで来た。
「はっちゃん、ねじ抜き」
「はい?」
「だから、ここのネジが折れちゃったんだって。抜いて」