キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
13・鬼なのに神隠し
「開店に間に合うか?」
「うん、たぶん大丈夫」
翌日、私は早朝に寮を出ることに。
裏口のドアを開けて見上げた空は、昨日の雨なんかウソみたいに晴れ渡っていた。
今5時だから、家に帰って、メイクしなおして……なんとか間に合うだろう。
俊はこんなときもしっかり店長で、『無理だったら休んでいい』なんて、一言も言わなかった。
「じゃあ、あとで」
部屋着の俊が私を引きよせる。
軽くキスをし、私たちは別れた。
ああ……幸せ。
昨夜の余韻に浸りながら、電車に揺られる。
俊の新生活が落ち着いたら……北京のお店が軌道に乗ったら……きっとまた、一緒にいられるよね。
家に帰ってメイクを直して着替えると、再びお店への道を戻る。
体は寝不足で重いけれど、俊が待っていると思えば、それさえも軽くなるような気がした。