キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


受け取って見ると、確かにフレームと横のつる(テンプルという)を繋いでいたネジが折れてしまっていた。

これでは、新しいネジを入れてつなげることもできない。


「杉田さん、ごめんなさい。早速困りました。教えてください」


ネジ抜きなんか、やったことない。

お客様のメガネを壊したらえらいクレームになってしまうから、今まで怖くてできなかった。


「はっちゃんってさ、社員なのに、なにもできないんだね」


加工台の下からネジ抜き用の工具を取りだして説明する杉田さんの横から、平尾さんがあきれたように言った。


はああ~?


あんただってパート4年目で私より長いらしいけど、何もできないじゃん。

しかも、めっちゃ上から目線で当然のように丸投げしてきて、よく言うよ。


ムカついた私は、しれっとした顔を作り、言い返した。


「ええ、平尾さんほどじゃありませんけど」


社員研修を受けただけ、私の方ができることは多いはず。やらないだけで。


「な……!」

「ちょっと二人とも、お客様がいるんだから、冷静にね」


杉田さんが焦った顔で言うと、平尾さんは顔を真っ赤にしてどすどすと太い足を踏み鳴らしながら自分専用スペース(と本人が勝手に決めている、奥の机)へ戻っていった。


< 20 / 229 >

この作品をシェア

pagetop