キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
結局ネジは杉田さんが抜いてくれ、ついでに新しいネジを入れ、曲がった部分を直してくれた。
私はそれを綺麗にクリーナーでふき、お客様の元へと運ぶ。
だいたいのチェーン店は、この手の型直しや簡単な修理は無料でしているので、その旨を告げると、お客様は笑顔で帰っていった。
さて、また掃除に戻ろうか。
そう思っていると、また杉田さんが加工台から私を手招きしていることに気づく。
近づいていくと、杉田さんは苦笑して言った。
「キミってさ、怖いもの知らずだよね。平尾さんは年上なんだから、もう少し気を遣ってもいいと思うよ」
平尾さんに聞こえないよう、小さな声で言ってくれる杉田さんは、やっぱり大人だと思う。
「でも……」
明らかに、最初にケンカを売ってきたのは平尾さんだし。
なんで私が叱られるの?あの人だって一緒に叱るべきなんじゃないの?
そう言ってやろうかと思ったら、杉田さんが先に口を開いた。
「あの人はさ、もう店長に散々言われてるの。でも、治らないから、みんなあきらめてるんだよ」
「はあ……」
「はっちゃんはまだ若いし、覚えればなんだってできるでしょ。店長もはっちゃんに期待しているから、あれこれ厳しく指導してくれてるんだと思うよ」
矢崎店長が、私に期待を?本当かな。
「がんばってよ、はっちゃん」
杉田さんの何気ない励ましの言葉が、胸にずしりと重くのしかかる。