キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
『はっちゃん?俺だよ、長井。今大丈夫?』
「うん。こっちはそっちの地区より、だいぶのんびりしてるから」
お金持ちのお客さんがたくさん来た八幡店とは違い、やっぱりこっちの地区は毎日のんびりしていた。
『じゃあ、社内メール見て。今すぐ』
「え?うん」
私はパソコンの前に異動し、社内メールの画面を開く。
すると、新着メールが一件あった。
それを開くと、新たな人事異動の一覧表が載っていた。
そこには関東地区全店の人事が載っており、自分の名前も片隅にあった。
『はっちゃんの名前のもっと下。見た?』
せかすような長井くんの言葉通り、画面をスクロールして自分の名前から下の方へ視線を移すと……。
「えっ……」
一瞬、言葉を失う。
そこには何の感情もない活字で、『退職者 矢崎俊』と、書かれていたのだ。
『どういうこと?はっちゃん、あれから連絡あった?』
「ううん……ない」
そんな。嘘でしょ?
指先でディスプレイに触るけど、当然画面の俊の名前は何も答えない。
『そうなの?昨日俺は休みで他の社員が見たんだけど、寮に引越し業者が来たみたいで、残ってた店長の荷物を運んでいったんだって。で、店長らしき人がいたって』
ということは、昨日俊は寮に戻ってきていたってこと?
どうして、私にも長井くんにもひとことも言ってくれなかったんだろう。
『俺も何回か電話してるんだけどさ、やっぱり留守電になっちゃって……』
長井くんの声が、だんだん聞こえなくなっていく。