キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
『がんばって』
小さいころから、そう言われるのが大嫌いだった。
食べるのが遅かった。着替えはもっと遅くて、靴はいつも左右逆に履いて怒られた。
けれど、悪気があってそうしていたわけじゃなかった。
自分では最大限頑張っているのに、さらにがんばれって言われたって、どうしたらいいかわからない。
奇跡的にできるようになっても、親からすればそれは当然で、特に褒められもしなかった。
そういう挫折を何度もして、いつからか『頑張ったってどうせムダじゃん』と思うようになってしまっている。
「……仕事は覚えなきゃって思ってます。お客様に迷惑をかけたくはないし、クレームになるとめんどくさいし」
でもいくら頑張って笑顔で接客したって、おかしなクレーマーに当たることもある。
「でも、必要最小限の事以上、頑張る気力がわかないんです。頑張ったって、どうせ無駄になるような気がしちゃって」
もともと、仕事を頑張るつもりがあって異動してきたわけじゃない。
占い師に、ここにいれば出会いがあるかもって言われたから、きただけだ。
「はっちゃん……若いのに何言ってんの」
「だって!今まですごく頑張っても、望み通りの成果が出たことなんてないもの」
杉田さんが困り果てた顔をした。
ああ、やっちゃった。親しくもない人に、何言ってるんだろう。
平尾さんにムカついたのは、きっと同族嫌悪だ。
私もきっと、周りから見たらああいう感じだったんだ。それを思い知らされたから、余計にムカついたんだ……。