キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「それにしても、俊がそんなすごい会社の御曹司だったなんて」
「つっても兄弟もいるからな。俺はメガネ部門を任されるらしい。だから修行に行けって、親父に奉公に出されたんだよ。このことを知っるのは、社長と一部の人間だけ。地区長は直属の上司だから、秘密裏に教えられたんだろう」
そりゃあみんなが知ってたら、お互いに気を遣って仕事がしにくそうだもんね。
そういえば、初デートで食事をしたとき。
なんか、すごくキレイに料理を食べる人だなあって見とれたのを覚えてる。
あれは、小さいころから華麗なる一族の中で、きちんとした教育を受けてきたからだったのね。
北京行きも地区長の仕事も、経験したかっただけ。
今の会社にしがみつかなきゃならない理由は、なかったんだ。
「もう……びっくりさせないでよ。私は突然俊がいなくなって、本当に後悔してたんだから」
「後悔?どうして?」
俊はキョトンとした顔で聞いてくる。
「だって私、俊に嫌いだなんて言っちゃったし……」
「は?そんなの気にしてたのかよ」
そんなのって……突然彼氏が消えて音信不通になったんだもん。気にするでしょうよ!
かちんとしてにらむと、俊はふっと笑った。
「むしろ、感心したよ。俺はてっきり、北京行きがなくなって、お前は喜ぶと思ったから」
ぽんと、長い指を持った手を、私の頭に置く。