キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「それにしても、俊がそんなすごい会社の御曹司だったなんて」

「つっても兄弟もいるからな。俺はメガネ部門を任されるらしい。だから修行に行けって、親父に奉公に出されたんだよ。このことを知っるのは、社長と一部の人間だけ。地区長は直属の上司だから、秘密裏に教えられたんだろう」


そりゃあみんなが知ってたら、お互いに気を遣って仕事がしにくそうだもんね。

そういえば、初デートで食事をしたとき。

なんか、すごくキレイに料理を食べる人だなあって見とれたのを覚えてる。

あれは、小さいころから華麗なる一族の中で、きちんとした教育を受けてきたからだったのね。

北京行きも地区長の仕事も、経験したかっただけ。

今の会社にしがみつかなきゃならない理由は、なかったんだ。


「もう……びっくりさせないでよ。私は突然俊がいなくなって、本当に後悔してたんだから」

「後悔?どうして?」


俊はキョトンとした顔で聞いてくる。


「だって私、俊に嫌いだなんて言っちゃったし……」

「は?そんなの気にしてたのかよ」


そんなのって……突然彼氏が消えて音信不通になったんだもん。気にするでしょうよ!

かちんとしてにらむと、俊はふっと笑った。


「むしろ、感心したよ。俺はてっきり、北京行きがなくなって、お前は喜ぶと思ったから」


ぽんと、長い指を持った手を、私の頭に置く。


< 223 / 229 >

この作品をシェア

pagetop