キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「……杉田さん、お渡しのお客様」


ハッと振り返る。

いつの間にか背後に、休憩から戻ってきたらしい矢崎店長が立っていた。

自動ドアの前には、こちらに向かってくる中年の男性が。

どうやら、前に杉田さんが担当したお客様が、できあがたメガネを受け取りにこられたみたい。

杉田さんはドアが開くと同時に笑顔を作り、挨拶をしながらお客様の元へ行ってしまった。


「俺がいない間、何やってた?」


店長は淡々と聞く。

まさか、平尾さんにムカついて言い返しましたとは言えない。


「径指定とネジ抜きを教えてもらいました」


それだけ言うと、店長はふうんとうなずく。


「ちゃんと仕事してたやつには、ご褒美」


そう言うと、手に下げていたビニール袋から、ペットボトルのストレートティーを取り出し、差し出してきた。

思わず受け取ったそれのラベルには、店長にはまったく似合わない可愛いお姫様のキャラクターが印刷されている。

もしや、休憩中に近くのコンビニで買ってきてくれたの?


「平尾さんにも渡してこい」


嫌な予感がすると同時に、同じメーカーのレモンティーを一本、渡された。


「……店長が持っていった方が喜ぶと思いますけど。イケメンだし」

「俺は忙しいんだよ」


そう言うと、加工台に積んであった、今から組み立てなければならないメガネとレンズのケースの山を指さした。

否定しないところを見ると、自分がイケメンだという自覚はあるらしい。嫌味な男。


< 23 / 229 >

この作品をシェア

pagetop