キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「……杉田さん、お渡しのお客様」
ハッと振り返る。
いつの間にか背後に、休憩から戻ってきたらしい矢崎店長が立っていた。
自動ドアの前には、こちらに向かってくる中年の男性が。
どうやら、前に杉田さんが担当したお客様が、できあがたメガネを受け取りにこられたみたい。
杉田さんはドアが開くと同時に笑顔を作り、挨拶をしながらお客様の元へ行ってしまった。
「俺がいない間、何やってた?」
店長は淡々と聞く。
まさか、平尾さんにムカついて言い返しましたとは言えない。
「径指定とネジ抜きを教えてもらいました」
それだけ言うと、店長はふうんとうなずく。
「ちゃんと仕事してたやつには、ご褒美」
そう言うと、手に下げていたビニール袋から、ペットボトルのストレートティーを取り出し、差し出してきた。
思わず受け取ったそれのラベルには、店長にはまったく似合わない可愛いお姫様のキャラクターが印刷されている。
もしや、休憩中に近くのコンビニで買ってきてくれたの?
「平尾さんにも渡してこい」
嫌な予感がすると同時に、同じメーカーのレモンティーを一本、渡された。
「……店長が持っていった方が喜ぶと思いますけど。イケメンだし」
「俺は忙しいんだよ」
そう言うと、加工台に積んであった、今から組み立てなければならないメガネとレンズのケースの山を指さした。
否定しないところを見ると、自分がイケメンだという自覚はあるらしい。嫌味な男。