キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「……はい」
嫌だったけど、私はペットボトルを持って平尾さんの元へ近づいていった。
店長から差し入れだと言って渡すと、平尾さんは素直に嬉しそうな顔をした。
とても不本意だったけれど一応謝ると、相手も謝ってくれた。
「そう言えばお礼を言わなきゃ……けど、忙しそうね」
平尾さんに言われて見ると、店長は真剣な顔でレンズの面取りをしていた。
なので遠くから会釈すると、矢崎店長はそれに気づき、にっと笑い返してくれた。
矢崎店長は、ただ荒ぶるだけの鬼でないみたい。それはわかったけれど……。
やっぱりホルモンみたいだから、『ハツ』はやめてくれないかなあ。
じっとにらんでいる私には気づかず、店長はさっさと仕事を片付けていく。
その瞳はやっぱり紅茶色で、なぜか吸い込まれそうになった気がして、ぱっと目をそらす。
「はっちゃん、どうしたの?」
「なんでもないです」
首を振り、また矢崎店長の方を盗み見る。
不思議なことに、さっきまで嫌味だと思っていたその整った顔立ちが、前ほど嫌いじゃなくなっていた。