キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
3・鬼の変化(へんげじゃなくてへんか)
それから、約2週間。
私はまだ、まじめに出勤している。
「えっ、占い師に異動先で彼氏ができるって言われたの?」
一緒に昼休みに入った平尾さんが、頬を紅潮させて聞いてきた。
ちなみに場所は例の、2階の寮。鬼の住処だ。
「出会うことはできるって。でも、その出会いをモノにできるかは、私にかかってるって」
「へえ。でもいいなあ、ロマンチックじゃない。運命の恋人が、いつ現れるかもしれないってことでしょ?」
平尾さんは大きなコンビニ弁当を目の前に広げ、目をキラキラと輝かせていた。
乙女なんだかおっさんなんだか、よくわからない人だ。
「だから、毎日メイクに気合が入ってるわけだ」
「そりゃあ、手を抜いたときに素敵な人が現れたらショックですからね」
「うんうん、そうだそうだ。出会いはいつあるかわからないもんね。私も見習おう」
と言いながら、もう3つ目のから揚げが平尾さんの食道を通過していった。見ていて気持ちのいい食欲です。
私は家から持参した、手作りのお弁当をつつく。
まあ手作りと言えば聞こえはいいけど、その実はお休みの日に作り置きした鶏団子と野菜のスープと、おにぎり。
朝から何品もおかずを作る気力はない。
「ああ、早く運命の人が迎えにきてくれないかなあ……」
好きな人ができれば、自分磨きももっと楽しくなるんだろうけどなあ。
気力を向ける場所がないから、やる気がでない。
今までの仕事場と一緒だ。