キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
優しい声音。
同じように優しい力加減で頭を撫でられる。
その瞬間なぜか、かああと頬に熱が集中していくのを感じた。
胸がドキドキと高鳴り、指先まで熱くなっていくようだった。
「あ……いらっしゃいませ」
お客様が来て、自動ドアが開く。
店長は営業スマイルでそちらに行ってしまった。
「なによ今の。いい雰囲気だったじゃないの」
長井君が、なぜかオネエ言葉で話しかけてきた。
にやにやして、肘で私をつついてくる。
「単価がね、1万も上がったって褒められた」
「えっ、すごいじゃない!」
いつの間にか平尾さんがもう片方の隣にいて、書類をのぞきこむ。
当然ながらお客様がいるので、全員ひそひそ声だ。
「さっきもね、ピンクゴールドが売れたんだよ。だから店長、ご機嫌さんみたい」
今日の売り上げも良く、今月も予算が達成できそう。
店長の異変はだからだろうと、私は思っていた。
けれど。
「そうかな」
長井君が微笑み、意外なことを口にした。
「店長、はっちゃんが来てから、丸くなっちゃったんじゃない?」
「えっ?」
「なんか狼が牙を抜かれちゃったみたいに、優しくなったことない?」
そうかな?
今でも単純なミスをしたら怒鳴られるし、アホだのバカだのパワハラ発言満載だし、休みの日も上の寮からあまり出なくて、お店を見張っているような気もするし……。