キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「転職したいの?」

「したいけど、どこを受ければ通りますかね」


やる気のない答えだと、自分でも思う。

でも面接も緊張するし、どうせ落ちるなら無駄な時間をかけたくない。確実に受かりそうなところだけにしたい。

少々呆れた顔で、占い師は私を見つめた。


「どこにも受かりません。あなた、言われた通り異動した方がいいと思いますよ」

「そんなあ」


占い師はテーブルに広がったタロットカードを指さす。

そこには死神とか足首を吊られた人とか、なんだか良くなさそうなものが上下ごっちゃに並んでいた。


「そこの店長さんは、とても厳しい人です。ワンマンだし、あなたからしたら宇宙人みたいに理解しがたい人」


それは既に聞いているけど。


「だけど、彼の心を開かせれば、強い味方になってくれるはず」

「はあ」


味方ってねえ……。でも厳しいんでしょ?オジサンたちみたいに、にこにこしてれば何でもしてくれるようになるってわけでもなさそう。


「あなたは自分で頑張ってみる前に、なんでもすぐにあきらめて逃げてしまうでしょう。それはとても悪いことです」


だんだんアホくさくなってきた。

そんな説教、実家のお母さんだって友達だってできる。

30分3000円も払ってるんだから、もっと具体的なアドバイスがほしい。


最初は前のめりだった背中をべたっと背もたれにくっつけてしまったとき、占い師が言った。


< 4 / 229 >

この作品をシェア

pagetop