キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
5・渡る世間は鬼だらけ
その後何日かは、杉田さんのセクハラ攻撃はなかった。
けれど、また店長が休日で、長井くんの休憩中に、「この前はびっくりさせちゃったかな。ごめんね」と言いながら寄ってきた。
しかもあろうことか、スカートのポケットに「飴をあげる」と言いながら、手を突っ込んでこようとしたので、さすがに気持ち悪くて後ずさり、手でそれを受け取った。
まだやるか……と思いながら、なるべく自動ドアの近くで掃除や植栽の世話をすることにした。
お客様が来れば、真っ先に接客に行く。
そうすることで、なるべく杉田さんと接触しないように気をつけていた。
「もう、私ばっかり仕事してる!」
奥でやる仕事を任せられた平尾さんが、私に聞こえるようにどすどすと足音を立てながら、できあがったメガネのトレーを重ねて運んでいた。
悪いなあとは思うけど、私のせいじゃないのに……。
でも、お尻や胸を触られたわけでもないのに、「セクハラされたんです」なんて言いふらすわけにもいかない。なので、聞こえないふりをして掃除に没頭した。
お客様が少ない日は、ため息ばかり出た。
もう、これじゃ矢崎店長にしごかれるより、よっぽどストレスたまるよ。
「……なんだか最近、店の中がキレイだな」
土曜日の朝礼で、矢崎店長が言った。
理由を知っている長井くんは微妙な表情をしている。
「はっちゃんが他の仕事より、掃除を一生懸命やってましたから」
平尾さんが嫌味たっぷりに言う。
ため息が出そうになったけど、私は無表情でいることでそれをこらえた。