キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
異動初日。
一応手土産のお菓子を持って、私は電車で新しい職場に向かった。
駅を降り、地下道を抜けてすぐ、メガネの形をした店舗の看板が見えてくる。
さすがに少し緊張してきて、まだ入り口のシャッターが閉まっている店舗の脇で鏡を取りだす。
昨夜切りそろえた前髪OK。ゆるく巻いた毛先OK。
メイクも崩れていないし、新しいブラウスとカーディガンに膝丈スカートはまだシワがついていない。
よし、行くか。いざ出陣だ。
──がちゃ。
「おはようございまーす……」
裏口の扉を開け、中に入ると……。
──ビー、ビー、ビー!
けたたましい電子音が耳をつんざいた。
やだ、これ警備システムの警報じゃない。
普通、扉を開けた人が専用キーで解除しておくものじゃないの?
オロオロしていると、店の電話が鳴りだした。
周りは一層やかましくなる。
そのとき、背後からトントンと誰かが階段を下りてくる音がした。
振り向くと、たしかに店舗の二階に続く階段から、スーツの男の人が降りてきている。