キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
なによ、なによ。
パンプスを脱ぎ捨て、ソファに腰を下ろす。
その途端、我慢していた悔し涙が溢れた。
レンズを割ってしまったのは、たしかに私のミスだ。
だけど、だけど……。
「うぇっ……ひっ、く……」
矢崎店長に呆れられてしまった。
セクハラにあっても、くだらない嫉妬をされても、矢崎店長が味方なら、やっていけると思っていたのに……。
「もうやだ……」
ほら、ね。
頑張ったって、ムダじゃない。
私が頑張ったって、神様はちっとも味方してくれない。
それでも周りは言うだろう。
『そんなことでいちいちへこんで泣いていないで、もっと頑張りなさい』と──。
トントンと、ゆっくり階段を上がってくる音がした。
寮のドアががちゃりと開けられる。
矢崎店長?
期待して顔を上げると、そこに立っていたのは長井くんだった。
手に持っているのは、私が一階に置き去りにしてしまっていたバッグだ。
「……今日は雨でお客さんが少ないから、体調が悪いなら帰ってもいいって、店長が」
私の泣き顔を見て、気まずそうに言う長井くん。
いつも口角の上がっている唇が、今は情けなく下がっていた。
「私はお店にいらないってことね」
私はやけになって立ち上がり、長井くんからバッグをひったくろうとした。