キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「帰るの?」
「やってらんないよ」
「でもさ、はっちゃん。今帰ったら、全部台無しだよ」
長井くんはひったくりみたいに、私のバッグを持ったまま離さない。
「なによう」
「はっちゃん、せっかく頑張ってきたじゃない。今こんなことで帰ったら、矢崎店長は本当にはっちゃんを見損なうと思う。全部が無駄になっちゃうよ」
「別にいいよ!店長にどう思われたって!」
「そういうこと言うのやめなって!」
珍しく長井くんが大きな声を出したので、びっくりして思わずバッグから手を離してしまった。
「……嘘ばっかり。強がりばっかりだよ、はっちゃんは。本当は、矢崎店長のこと、好きなくせに」
「え……」
私が……矢崎店長を、好き?
長井くんのとんでもない発言に、びっくりした。
けれど、その言葉は意外にすんなりと私の胸の中に落ちていった。
すとんと音を立て、恋心は私の胸に根をはりはじめる。
「わかるよ。俺は、店長の元で成長していくはっちゃんを、見ていたから」
「長井くん……」
「俺は、はっちゃんが好きだから」
またまた驚く。
目を見開くと、長井くんは苦笑した。
「あーごめん、警戒しないで。杉田さんみたいに触ろうとか、どうにかして付き合いたいとか、そういう気はないんだ。俺は、矢崎店長の元で頑張ってるはっちゃんが、好きなだけで」
ドキドキと、胸が高鳴る。
好き、だなんてストレートな告白、学生のとき以来だったから。