キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「だから、こんなくだらないことで逃げるはっちゃんは見たくないよ」
「うん……」
「応援するなんて言えないけれど、はっちゃんがいつか矢崎店長をあきらめる日がきたら、その時は俺がいるからさ。とにかく今は、まだ帰らないで」
長井くんは頭を下げてお願いした。こんな私に。
全然気づかなかった。このひとが、私を見ていてくれたなんて。
嬉しいような困ったような、複雑な気分だ。
「うん……わかった。お願いだから、顔を上げて」
長井くんの腕を叩くと、彼はホッとしたように顔を上げた。
私は休憩の1時間をたっぷり使ってメイクを直し、お弁当を食べ、何食わぬ顔で戻ることにした。
やっちゃったもんは引きずったって元に戻らないし、お客様に私の事情は関係ない。
しゃきりと背を伸ばし、お店への階段を下りていく。
矢崎店長の信頼を、自分で取り戻すために。