キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
6・鬼も角折る
翌日の日曜は何もなく無事に済んだ。
「何度言えばわかるんだよ。いくら手元を見やすくって言われたって、こんな強い加入度入れたら、歪んで使えないに決まってるだろ!」
月曜。
難しそうな視力のお客様の検眼が終わった途端、店長に呼ばれて小声で叱られた。
私は慌てて戻り、仮枠のテストレンズを入れ直した。
見えるメガネと、使いやすいメガネは違う。
限界まで見えるようにした度数より、少し軽めにしておいた方が使いやすいということもあるので、お客様と相談して決めなければならない。
「あ~、この方が歩くのは楽だねえ~」
杖をついたおじいちゃんは、軽くした遠近両用の度数で納得してくれたみたい。
「新聞を読むには、遠近じゃなくて、お手元専用の方が見やすいですよ」
「老眼鏡ってこと?」
「そうですね。歩くときには外していただかないといけませんけど」
「そうだよねえ。じゃあ、老眼鏡も作ろうかなあ」
「かしこまりました。ありがとうございます」
やった。二本同時販売。
おじいちゃんは遠近両用とお手元用の二本のフレームとレンズを決めると、満足そうに帰っていった。
「ボケたおじいちゃんをだまして二本も買わせて、はっちゃんも鬼になったよね~」
早速レンズ注文をする私の後ろから、平尾さんがいつもの嫌味を。