異常なあの子を好きになってしまった
「今日は席替えをするぞー」
担任の言葉を聞いて浮き足たつクラスメート達。
桜井月は欠席のため当然不参加だ。
ということは窓際の一番後ろの席はそのままで周りが移動するということ。
「あの人の隣だけはなりたくないよな…」
「ああ…」
桜井月のことをみんなは怖がって『あの人』と呼ぶ。
決して名前は口にしない。
それがおのずと暗黙の了解みたいになっていた。
「くじ引きで決めるぞー」
俺の順番は13番。
良くも悪くもない中途半端な数字だ。
そしてくじで当たった席は、
「うわー、風見どんまい」
桜井月の隣の席だった。
「気を付けなよ」
「成績落とすなよ」
周りからの野次?忠告?励まし?を聞きながら
席を移動した。
大丈夫。関わらなければいいだけだ。
それにあんまり学校来ないし。
そんなことを思ってしまっていた俺も噂や風評に流されていた一人だったんだろうと思う。