嘘をつく、その瞬間。
「……ざまぁ。」
本当に、なることはないんだ。
「由、朔……。」
「俺の名前を呼ぶな。」
冷たく、拒絶される。
グイッと、引っ張られた髪の毛。
「止めてっ、お願いだから!」
それは、由朔にされたもの。
「……何してるの。」
ふ、と。
後ろから、何度も何十回、何百回聞いた声が聞こえた。
「……ユイ。」
「ア、オ……?」
由朔が、アオを呼ぶ。
どうしているの?
「由朔。何してるの?」
その声は、低く怒りを表している。
いや、憤怒。
私に対しては、聞いたことの無い声。
「……別に。」
「ゆう。」
アオが、人の名前をあだ名で呼んだり略す時は怒ってるとき。