嘘をつく、その瞬間。

珈琲の香りが漂い、鼻を擽った。

「そう。

貴方……龍蝶の“元”姫でしょう?

雷神くらい、分かるわよね?」

元、を強調されてモヤっとした。

「……うん。」

関係なくなったとはいえ、龍蝶がリーダーの学校と雷神がリーダーの学校の生徒……しかも、一人は雷神の姫というんだ。

いくらなんでも、これは見つかったら終わりだ。

「ねぇ。貴方、嘘の証言で追い出されたんでしょう?」

「何で、それを……。」

あの光景が浮かんでくる。

怖い、怖い……。

「大丈夫、怯えなくて大丈夫よ。」

「…お待たせいたしました、カフェラテとキャラメルラテです。」

コトッ…と置かれたキャラメルラテ。

フワフワの白い泡にフワフワの生クリームが浮いていてその上に琥珀…黄金色に近い濃い色のキャラメルがかかっていた。

「どうぞ、ごゆっくり。」

営業スマイルとは思えない程、素敵な笑顔で去っていった店員さん。


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