嘘をつく、その瞬間。

「……今日は特別に、タダでお作りしましょうか?」

「え、でも……!」

溢したのは、私だ。

タダで貰うなんて悪い。

「小春さんが連れてきたご友人ですから。

どうぞ、貰ってください。」

ニッコリ笑う店員さん。

「っ、じゃあ、お願いします。」

どうやら、私はこの笑顔に弱いようだ。

言葉に詰まってしまう。

この人が、小春さんの知り合いなんだろうか。

周りを見る限り、この人しかいない。

店員さんは、19~20歳ぐらいにしか見えない。

「ふふ、あの人がここの店長……オーナーよ。」

「え……!?」

「驚いた?」

まるで、私の反応を面白がっているように笑う小春さん。

「うん…。」

小春さんの知り合いは、凄い人ばかりなんだろうなぁ。

「さっきは、ごめんなさいね。

もうちょっと言葉を慎めば良かったわね。」

本当にごめんなさい。

と、眉を下げて謝る小春さん。

「い、いえ!私も取り乱して…。

ごめんなさい。」

私も、頭を下げた。

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