嘘をつく、その瞬間。

「仕返し、したいと思わない?」

そう言って出てきたのは可愛らしいスマホカバーに入っているスマホだった。

「……キャラメルラテです。」

ピリピリとした空気に優しい声が聞こえてハッとした。

緊張していてか、さっきまで匂わなかった珈琲独特の匂いが鼻を刺激した。

珈琲の匂いがするにも関わらず、味はキャラメルの凄く甘い匂いなんだから、不思議だ。

「失礼します。」

と、目の前に置かれるキャラメルラテ。

「ありがとう、ございます。」

そう言って、チラッと店長さんを見ればニコッと微笑んでくれた。

店長さんが、奥へと行ったのを確認すると小春さんはスマホをテーブルに置いた。

「まずは、飲んだらどう?」

そう言われたけど、私は首を横に振った。

美味しそうだけど、何故か飲む気にはなれなかった。

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