嘘をつく、その瞬間。

*心華side*

───これで、本当に良かったんだろうか。

「っ、竜也……。」

「ごめん、心華……、追い出して、酷いことして。」

竜也に抱き締められ、竜也の名前を口にするが思っていることは全く違う。

だけど、こんなにも胸が締め付けられて涙が出るのは何でなんだろう。

シトラスの香りが凄く、心地好い。

「竜、也ぁ……。」

涙が止まらない。

この涙は。

皆の場所に戻れたことの喜びの涙。

それとも────……。

そう考えたが、私は考えるのを止めた。

あの写真を、皆に見せたのは私。

私がっ、私は、アオを追い出した。

これで、良かったのか。

うん、良かったんだ。

自問自答をして、自分を落ち着かせる。

───だけど、こんなにもモヤモヤするのはなんでだろう。

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