少女アリスの唄

亜理子だけが、何も能力がない、というわけでもない。霊感は少しあるし、何より亜理子の家は道場。それなりの戦闘力は持ち合わせているのだ。



「お、着いた着いたー」
「真樹、教室とか、そういう鍵、全部作ったのかよ?」
「当たり前だろ。じゃなきゃ奈留、拗ねんだもん。つまんねーとか言って」
「う…、うるせえー…」



そっぽを向き、顔をそらす奈留を見て苦笑いを浮かべつつ、鞄から美術室の合鍵を取り出し、ドアを開けた。



「さ、七不思議解明といきましょーかっ!」



元気良く、先に美術室に足を踏み入れたのは奈留だった。それはもう、楽しそうに美術室を見渡したあと、奈留は自分と幼馴染みの波奈に問いかけた。



「で波奈ー、その女の絵ってどれだよ?」
「んー、なんだっけ、赤毛で二つ結びしてて、目が茶色で水色のワンピース着てて…
あ!背景がすごい幻想的だった気がする」



波奈の曖昧な記憶を元に、四人でその女性の絵を探していると、亜理子がこれじゃないの?、とみんなに呼び掛けた。



「これっぽいけどさあ、これ…なんか変な空間ができてね?前にこの空間になんか描いたあった、みたいな…」



奈留の言葉を聞き、良く見ると、確かに中心の方に不思議な空白がある。背景は蝶や、赤い月、見たことのない花、オーロラがグラデーションされていた。



「まさにこれだよ!あたしが言ってたの!だって、今日の昼休み行ったときは、ちゃんとここに赤毛で二つ結びした女の人がいたもの」



わあ、わあ、と興奮している波奈とは違い、亜理子はぶるぶると鳥肌が立つのを感じていた。それと同時に、嫌な予感もした。
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