少女アリスの唄
「怖ぇー、マジかよ」
「マジだよ。あたし、それだけは覚えてる!」
自信満々に言って見せる波奈に、奈留は降参したようにはいはい、と頷いた。
「とりあえずは保留!ってことでいんじゃね?色々見てから解明しよーよ。じゃなきゃつまんねーじゃん?」
ええ、まだやるの、と不満そうな顔を浮かべる亜理子を真樹が気遣いつつも、次の目的地は体育館に移動することになった。
この学校の七不思議のひとつで夜の体育館で勝手にボールが動きだし、縄跳びをしている女の子が現れる。…らしい。
「ねー…もう解明やめよ…霊たちが面白がるじゃんか…ねえってば」
亜理子は先程から止めようと試みるが、みんなは聞く耳を持たずに歩を進める。一度はひとりで帰ろうかと思ったが、暗い学校の中をひとり、だなんて恐ろしすぎると仕方無くついていく、と決めた。
「亜理子チャン、大丈夫だよ、もし現れたときゃ、みんなで逃げりゃ大丈夫」
「そーだよ、きいちゃん。みんな一緒なんだから、不安がることないよ!」
案外優しいのだな、と奈留を見て思う亜理子であったが、波奈と奈留の励ましがあり、いくらか元気づけられた。言葉で伝えるのは、少し恥ずかしくて、心の中で彼女たちに感謝した。
「んじゃ、行こ」
そして四人は、真っ暗な廊下に懐中電灯のあかりだけを頼りに、1階の体育館へと向かった。