サイレント
女子生徒が辛そうにして起き上がり、母と連れだって帰っていくのを廊下に出て見送った。
今日、風邪で早退するのはこれで二人目だ。
樹里自身も生徒に風邪をうつされないよう気をつけているものの、こう風邪の生徒が多いのではなかなか予防しにくいものがある。
昨日の晩一も少し咳をしていた。
再びデスクに座り、溜まっていた書類に目を通す。
今日は三年生が私立高校の受験前日ということで、いつもより校内の生徒が少ないような気がした。
「先生ー」
不意に呼ばれてベッドの方に視線を向けると相沢がカーテンの隙間から顔を出していた。
「何?」
「飲み終わったー」
マグカップを掲げて相沢がにへら、と笑う。
樹里はカップを受け取りに相沢の元へ向かった。
「具合はどう?早退する?教室に戻る?」
「や、まだ微妙なんでここに……」
「そう?」
「はいっ」
病人にしてはやけに明るい声で相沢は返事をした。
相沢の視線が先程から樹里の顔や身体を往復しているのを感じていた樹里は何となく腕を組んで一歩後ろに下がった。
「あれ。先生首んとこ、虫刺されっすか?冬なのに」
相沢が首を傾げて不思議そうに言った言葉に樹里はギクリとして首筋を手で押さえた。
「先生?」
「あ、えっとそう、あれ。マフラーが合わなくってかぶれちやったみたいで」
「ふーん」
今日、風邪で早退するのはこれで二人目だ。
樹里自身も生徒に風邪をうつされないよう気をつけているものの、こう風邪の生徒が多いのではなかなか予防しにくいものがある。
昨日の晩一も少し咳をしていた。
再びデスクに座り、溜まっていた書類に目を通す。
今日は三年生が私立高校の受験前日ということで、いつもより校内の生徒が少ないような気がした。
「先生ー」
不意に呼ばれてベッドの方に視線を向けると相沢がカーテンの隙間から顔を出していた。
「何?」
「飲み終わったー」
マグカップを掲げて相沢がにへら、と笑う。
樹里はカップを受け取りに相沢の元へ向かった。
「具合はどう?早退する?教室に戻る?」
「や、まだ微妙なんでここに……」
「そう?」
「はいっ」
病人にしてはやけに明るい声で相沢は返事をした。
相沢の視線が先程から樹里の顔や身体を往復しているのを感じていた樹里は何となく腕を組んで一歩後ろに下がった。
「あれ。先生首んとこ、虫刺されっすか?冬なのに」
相沢が首を傾げて不思議そうに言った言葉に樹里はギクリとして首筋を手で押さえた。
「先生?」
「あ、えっとそう、あれ。マフラーが合わなくってかぶれちやったみたいで」
「ふーん」