サイレント

two

二限目の体育の時間からずっと保健室に行っていた相沢が給食の時間になってようやく教室に帰って来た。

友達数人と机を寄せ合って給食を食べ始めていた一は相沢を呼んだ。
相沢はトレイに乗せた給食と椅子を持ってやって来るとやけに浮かない顔で一の隣に腰をおろした。

「どうしたんだよ相沢、元気ねえじゃん。そんなに風邪ひでえの?」田谷が牛乳を飲みながら相沢に尋ねる。

牛乳を飲みながらご飯を食べられる田谷の味覚が信じられない。

「いやー。風邪はまあ、あれだけど」

「じゃあ保健室行くなよ」

一はやや冷たく言い放った。保健室に行った相沢の下心なんてわかりきっている。

「何だよイチ。らしくねえじゃん」

「別に」

「つか、じゃあなんで相沢そんな暗いわけ」

田谷の問い掛けに相沢は神妙な顔をすると、両手で皆に手招きし、テーブルの上に身を乗り出した。

一や他の奴らも身を乗り出して顔を寄せ合う。

「金城先生の、首に……」

小さく相沢が囁く。

「キスマークがついてた」

「うっそ!マジ!?」

大声で叫んだのは田谷だった。
相沢が慌てて田谷の頭を殴る。

「マジかよー。超見てえソレ!!」

「ばっか!つーか、もう俺ショックでさー。思い切って彼氏いるのか聞いたんだけど、いないって言われたしー」
< 109 / 392 >

この作品をシェア

pagetop