サイレント
「何でそう言い切れるわけ!?」

男子の一人が不満そうに言った。

「や、根拠はないけど。金城先生って尾垣苦手そうだし」

「えー。そうかなー。わかんねーよ」

「なあ?」

まだ疑っている仲間達を余所に、相沢だけがショックで暗い顔をしていた。

何だよコイツ。結構マジだったわけ?

一は相沢の横顔を盗み見ながらカレーを一気に平らげた。
胃が鈍く軋んだ。

……最近よく胃がもたれる。

昼からは相沢が授業を抜けることはなく、田谷達もその後樹里の話題を引きずることはなかった。

一は休み時間のたび、廊下に出て、さりげなく反対の校舎にある保健室を観察した。

樹里はつまらなそうに椅子に座っていたり、女子生徒たちと話をしていたりと特別変わった様子はなかった。

一はよっぽどのことがない限り保健室には行けない。

放課後になれば会えるけれど、それも弟がいれば一定の距離を保たなくてはいけないし、結局一が樹里とゆっくり出来るのは土日だけだった。

わざわざ県外まで車を走らせ、車のまま入れるホテルへ行く。

金を払うのはいつも樹里だった。
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