サイレント
早瀬は保健室の常連客だ。教師受けは悪いが、樹里は彼女を嫌いじゃない。
話してみればそれほど悪い子ではないし、昔の自分もあの程度のものだったように思う。
社会に出て落ち着いたけれど。
早瀬に呆れてふと視線を落とすと、寝ていたはずの一が目を開いていた。
まともに自分の顔を下から見られたことに恥ずかしくなり、樹里は思わず顔を背けた。
「ごめん!煩かったよね!起こしちゃった!!」
慌てて一と距離を取るが、明らかに不自然だ。
しかし、不自然すぎるその行動に一は何も反応せずにただ怠そうに寝返りを打つ。
そうしているうちにガラリと今度は中庭に面した窓が開かれた。
「おう、芹沢、大丈夫か?一応家に連絡したが、留守だった。つらいなら早退するか?放課後まで保健室にずっといちゃ金城先生にも迷惑だろ」
窓から覗き込むようにして一に声をかけたのは一のクラスの担任だった。
一は上半身を起こし、しばらく考えると「じゃあ帰ります」と答えた。
「おう、そうか?芹沢は徒歩通学だな。歩いて帰れるか?なんなら送るぞ、って次、俺授業だったすまん」
「帰れます。たぶん」
「そうかそうか。気をつけてな」
にかっと笑うと担任は背を向けて反対側の校舎の方へと小走りで消えていった。
話してみればそれほど悪い子ではないし、昔の自分もあの程度のものだったように思う。
社会に出て落ち着いたけれど。
早瀬に呆れてふと視線を落とすと、寝ていたはずの一が目を開いていた。
まともに自分の顔を下から見られたことに恥ずかしくなり、樹里は思わず顔を背けた。
「ごめん!煩かったよね!起こしちゃった!!」
慌てて一と距離を取るが、明らかに不自然だ。
しかし、不自然すぎるその行動に一は何も反応せずにただ怠そうに寝返りを打つ。
そうしているうちにガラリと今度は中庭に面した窓が開かれた。
「おう、芹沢、大丈夫か?一応家に連絡したが、留守だった。つらいなら早退するか?放課後まで保健室にずっといちゃ金城先生にも迷惑だろ」
窓から覗き込むようにして一に声をかけたのは一のクラスの担任だった。
一は上半身を起こし、しばらく考えると「じゃあ帰ります」と答えた。
「おう、そうか?芹沢は徒歩通学だな。歩いて帰れるか?なんなら送るぞ、って次、俺授業だったすまん」
「帰れます。たぶん」
「そうかそうか。気をつけてな」
にかっと笑うと担任は背を向けて反対側の校舎の方へと小走りで消えていった。