サイレント
パソコンを立ち上げて小説の更新ページを開く。

一と自分をモデルにした小説はもうかなりのページ数になっていた。

もちろん書かなかったことや、事実とは多少違わせて書いている部分も多々ある。
そろそろ最終回にしたいのだが、終わらせ方がわからなかった。

現実ではまだまだ終わりそうにないのだ。樹里と一の関係は。

悩みながらもキーボードを叩いていると電話が鳴った。携帯ではなく、家の固定電話だ。

しばらくして鳴りやんだと思えば部屋の扉が開き、母が顔を出した。

「電話だよ。尾垣先生って方から」

樹里はパソコンを閉じるとコードレスを受け取った。母は一階へ下りていく。

「もしもし」

「あっ、金城先生?!尾垣っす」

「え、はい」

わざわざ職員名簿を調べてかけてきたのだろうか、と樹里は首を捻る。

「いやね、今日は久々部活休みにしたおかげで時間が出来たんすけど」

「はあ」

「今からどこかに行きませんか?」

唐突な誘いだった。
いつもならすぐにでも断るような性急な誘いだった。

けれど、何故だかOKしてしまった。
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